賢い君を好きになる

何てコトない毎日

気怠い朝はやってくる

毎度、
やってしまったな、と後悔するのに
なぜ人は繰り返してしまうのだろうか。


気怠い朝はやってくる。

いつもより早い時間に目が覚めたのに
いつもより重い気がする身体をシングルベッドに横たえて、ぼんやりと天井の梁を見る。

脳内のタイムスケジュールを、可能な限りぐっと押す。
そうして空けた時間で惰眠を貪ろうと決意しても、
妙に目が冴えているため叶わない。


ああ、きょうはきっとだめだ。
休戦です。ピッピー。


拝啓

初春の砌、
いかがお過ごしでしょうか。

酒を飲むと、翌日おなかがいたくなりますよ。

日に日に寒さが厳しく感じられますが、
頼むから上述のことを念頭に置いて、ご自愛ください。

敬具

何てコトない毎日がかけがえないの

穏やかに流れる時間があまりにもしあわせで、居ても立ってもいられず、書き留めることにした。

すっかり見慣れた病室のベッドの上で、
ブラインドの降りた窓を眺めながら
甘いお菓子とコーヒーを嗜む。
身震いをしてしまうほどに穏やかだ。

やっと、本当にやっと、コーヒーを飲む余裕が出てきた。仕事をしながら飲んで以来だから、50日ぶりくらいになるだろうか。
今日もただ「好きなもののひとつ」として、何気なく手に取っただけであって、コーヒーに特別な思い入れがあるわけではない。

それでも、一口飲んで、一息ついて、
「こんなにもおいしく、しあわせな味がするのか。」と感動してしまった。
飲み干すたびに、日常のパズルピースが戻っていく感覚がした。

 

「ああ、ここで終わってしまうのか。
人生、呆気なかったな。」


朦朧とした意識の中、それなりに覚悟していたのに、
めでたく救われてしまった。
合併症や感染症での死亡率が高い病気なので
意識がはっきりしてからもいつ死ぬかわからない恐怖感が付きまとっていたけれど、
今日でなんとなく、

「もう死にはしないだろうな」と思えた。

 


コーヒーを嗜む。
ドライヤーで髪を乾かす。
本のページをめくる。
dポイント欲しさにアンケートに答える。
コンビニでスイーツとにらめっこする。
病院食の今週の献立をチェックする。

 

そんなふとした瞬間に、私はもう一度生きる権利を得られたのだと実感する。
何気ない時間が愛おしい。
私は今とてもとてもしあわせだ。

 

『何てコトない毎日が かけがえないの』

 

こんなにも、かの有名なアイカツ!の初期ED「カレンダーガール」のこの一文を反芻した日は無い。
人生を以てアイカツ!は道徳だと体感できた。
ファン冥利に尽きる。素晴らしい。

 

こんな穏やかな時間が続いてくれたらいいのになとは思うけれど、
きっとこの先も、まだまだ新しい苦しみや悲しみがやって来て
今感じているありがたみやしあわせも忘れていくのだろう。

 

それでも、
ぽつりぽつりともたらされる
何てコトないかけがえのない時間を噛み締めて、
自分なりに、一歩ずつ、また生きていこうと思う。